電話で「ツキ板屋と申します」と言うとほとんどの方が「すいませんもう一度お願いします」と聞き返されます。私の滑舌が悪いこともあるかもしれませんが、聞きなれていない言葉の様で一瞬戸惑われるようです。しかしツキ板の歴史は古く、日本にテレビが普及し始めたころには既にテレビキャビネットの素材として突き板が使用されていたようです。
「なぜ薄くする?」「どのように薄くする?」「どのようにして使うのか?」を解説したいと思います。今までいただいたお客様よりのお問い合わせを参考に解説していきます。
ツキ板のメリット「なぜ薄くする?」
多くの人が手触りや風合いなどで「心地よさ」「安らぎ」を感じる天然木ですが、家具などの製品に加工しても水分(湿気)や温度(気候)によって歪んだり、曲がったり、割れたりします。原因は天然木の導管に水分を保持しているからです。その為天然木をどんなに乾燥しても含水率0%にはなりません。
天然木の固まりが大きいほど、中心部分と外側で含水率が大きく異なり均一になりません。天然木の性質で、含水率が少なくなると縮み、含水量が多くなると膨張します。天然木の中心部分と外側で相反した動きが起こるため歪みや割れになります。
極力均一の含水率にするために天然木を薄くスライスして乾燥するのがこの「ツキ板」です。天然木を厚み0.25ミリ~0.6ミリ程度にスライスします。厚みに違いがあるのは天然木は材種により性質が異なるためその木にあった厚みに加工するからです。また、0.6ミリ厚などは用途によりツキ板の厚みを変えています。
天然木を薄くツキ板に加工する事で水分量が均一に近くなり割れや歪みが極限まで軽減されます。このことから天然木をいろいろな物や場所に使用できるようになります。
また、天然木を薄くスライスすることで大量のツキ板が生産できます。軽量な基材にツキ板を貼り付ける事で天然木の有効利用と軽量化ができます。「ツキ板シート」や「ツキ板合板」に加工できることで幅広く色々な物の素材として使用可能となります。
「ツキ板シート」に加工すると非木材製品や平滑でない物に貼り付ける事が可能となるため色々な素材を天然木での高級化が可能となります。例として「高級車の内装」や「楽器」等に突き板シートは使用されています。
「ツキ板合板」に加工する事で無垢材ではできないインテリア・家具・建具・室内内装などの高級化と軽量化が同時に可能となります。デザイン的にも突き板を使用することで可能性が大きく広がります。
天然木を使用する上で薄くスライスしたツキ板に加工する事はメリットがとても大きく、製作者にとってはとても扱いやすい素材となります。
天然木をツキ板に加工する方法(製造方法)「どのように薄くする?」
- 天然木(原木)の買い付け
木材商社やツキ板製造会社により世界中から原木が輸入されてきます。買い付け時期のほとんどが冬季で天然木が痛まないようにコンテナに入れられて船舶により日本に入ってきます。 - 原木の製材
検疫を通った原木のみが流通されて製材所でカットを行い「フリッチ」にします。このときに出た端材の中で大きな物は市場等で販売され、小さな物は木材チップにされ紙などの原料や火力発電所等の燃料になります。 - フリッチのスライス加工
カンナを大きくしたような機械スライサーで「フリッチ」を薄くスライスします。このときに職人が木の特性を読みスライスする厚みを調整します。天然木の中には煮沸やスチームで蒸さないとスライスできない天然木もありスライス工場には大きな煮沸漕やスチーム漕があります。 - ツキ板の乾燥
スライスしたツキ板を長く保存できるように10%程度まで天干や乾燥機で乾燥します。天然木の中にはスライスしてからすぐに乾燥しないと変色してしまう物や、何日か濡れたまま置いておかないと色が出てこない天然木もあります。 - ツキ板を木工用素材に加工
乾燥したツキ板を在庫して、お客様のご注文に合わせた木工用素材「ツキ板シート/ツキ板合板/ツキ板フリーボード」に加工して発送します。
ツキ板の木目の種類
天然木の材種の数だけ突き板の種類もありますが、そのほかに「木目」による違いがあります。この木目の違いとは、天然木からツキ板を製作する段階でどのようにカットするかで最終的に突き板になった時の木目の見え方が変わります。
弊社で取り扱いのある突き板は基本的に「柾目」「板目」の2種類の木目が有ります。いくつかの天然木の材種に中には「杢目」「ブロック」といった物もございます。
■柾目
原木(丸太)を十字に「ミカン割り」してから白太部分の外側と左右の角と芯側をカットして柾目スライス用の「フリッチ」にします。この形にカットするのはスライスの機械でつかみやすくすることと柾目が真っ直ぐになるからです。右側の木目が真っ直ぐになる部分をスライスするのが「柾目」です。
■板目
原木の白太の部分と芯側を平行にカットして板目スライス用の「フリッチ」にします。鋭角の山のような木目のツキ板になるのでとても天然木の良さがでるのが「板目」です。
■杢目(玉杢/コブを含む)
原木をまるで大根の「かつらむき」のようにスライスするのが「杢目」です。天然木の全体をそのままカットするので賑やかな木目になります。
■ブロック
原木を一度小さなピースにカットした物を特殊接着剤でつなぎ合わせてスライスした物が「ブロック」です。フローリングを小さくしたような木目になるので集成材をスライスしたような木目です。